かみじょー作小説公開
タイトルは【カツシチュー】です。
3月16日からのオンエアでラジオドラマしてます。
3月、この時期は卒業と終わりと始まりの季節。
そんな季節にぴったりの作品となってます。
ではどうぞ
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カツシチュー
学校の先生がいっていたムツカシイ言葉が喉まで出てきてるんだけど、はっきりわからない。
なんだろ?
たしか……
カツカレー?
とか言っていたようないないような……
私はさゆき。
しがない保育士だ。
迷いました人生に。
今の職業はもともとやりたかった仕事だし子供も好きだった。
問題は「だった」こと。
今は中途半端な気持ちで以前みたいな情熱が持てない。
続けることにも苦痛を感じ始めてきた。
ちょうど夏休みまであと1週間。
私には夢がある。
そう捨てられない夢が。
漫画家になりたい!
練習も欠かさずに仕事上がりにしているし、機材もお高いやつを購入した。
いつまでひきづっているんだと周りのみんなは言う。
聞いてる振りをして全て聞き流した。
私の生き方ってなんだろう?
あの時先生はなんて言ってたんだろう?
クエスチョンマークばかりが浮かぶ。
でも先生が卒業式で言ってたあの言葉に私は不覚にも涙した。
時間は過ぎ、選択が私に迫ってきた。
残るか進むか。
どの道も平坦なんかじゃない。
漫画家で生計をたてるのは至難の業だとわかっていた。
なのに、わざわざそんな道を選ぶことにも不安でいっぱいだった。
カツカレー。
いやちがうな…
たしか
カツシチューだ!
カツシチューって何?
あんまり美味しそうじゃないな。
私の記憶は少しずつ色を鮮やかにさせてきている。
8月15日。
辞表を出した。
胸につかえていたモノが取れたような気持ちだ。
その時は迷いはなかった。園児や園長先生に挨拶をした時は今までのことがフラッシュバックして
目頭が熱くなった。
わたしはすすむ。
元来た道へは帰らない。
それからしばらくは無我夢中で漫画を描き続けた。
大賞にも応募した。
一段落して我に還る。
ふと、自分の選択に迷いが舞い戻った。
夢ばかり見てていいのかと。
それが掴めるものなのかと。
次第に胸は苦しくなり、
わたしは沈み始めた。
潜水艦みたいにわたしの精神は深く潜ってしまった。深く黒く音もなく。
ある朝、目が醒めると先生の言葉を思い出した。
それはカツカレーでもカツシチューでもなく……
死中に活あり
だった。
先生はこういっていた。
「君たちに最後に伝えたいことがあります。今日でみんな揃うのも最後でしょう。同じ時、同じ空間を三年間過ごせたことを忘れないでください。
先生も忘れません。
これからの道でどんな困難が待ち構えていたとしても諦めないでください。
死中に活あり。
どんな時も必ずチャンスはそこにあります。
困っときは周りを見回してみてください。
そう、深呼吸でもして
空を眺めてみたり、本を読んだり、長電話してみてください。
そこらじゅうに君たちにとってのきっかけがあります。
君たちは輝いてます。
どんな状況でも。
涙してどうしようもない時でも。
君たちの選択は間違っていません。
だから、自分自身を信じて、どんな時も諦めないでくださいね。」
私の頬を涙がつたった。
進むんだ!
夢なんてまだ始まってないじゃん!
私はもう振り向かない。
明るい朝の日射しが背中を押してくれているようだった。
涙を拭いて私は布団を飛び出した。
そうだ!
お昼はシチューにしようか。
カツシチューに。
かみじょー作:カツシチュー
でした。
5年前くらいに書いた作品です。
今回のラジオねこきっくで、リーダ-がこの作品でラジオドラマしているので、
小説本文も同時公開!!!
なかなか拙い文章ですが、あの頃の気持ち熱さ、そして迷いや始まりが詰まっている自分でも好きな作品となってます。
また感想なども聴かせてくださいね。
では。
writer:かみじょー
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